ずっと行ってみたかった,美山荘。けど,なかなか予約が取れないんです。
宿泊は,3部屋だけですからね。
そして,1人5万程度の料金設定。おいそれと,いける場所ではないです。
けど,どうしてもその雰囲気やしつらえ,そしてもてなし。もちろん,その摘草料理も。
それを1回でいいから体験してみたくて。
そしてそれを,自分のスタンダードにしたかったのです。
結果として,とても得がたい貴重な時間を体験することができました。
もてなしに対する考え方を,180度変えてくれた気がします。そして,旅館で出すべき料理とはかくあるべきだと。


もしかしたら,こちらが母屋なのでしょうか。
部屋がある建物をでて,向かいの建物は。
途中には,とても雰囲気のある灯篭が照らしてくれます。
幽玄の世界に誘い込まれていく,そんな気分になってきます。
そして,母屋の玄関で迎えてくれたのが,この対流式のストーブ。
その暖かい炎が,ほっとさせてくれます。


襖で仕切られた,12畳ほどの部屋に通されました。
確か,最初に女将が挨拶に来てくれた気がします。別扱いと言いますか,とても大切にしてくれる,そんな気にさせてくれます。
そして,お膳はありません。全ての品がこのお盆の上に一品ずつ載せて,傅くように差し出してくれます。
大切な料理を,大切な人に。この様にされたことは一度もありません。
とても,とても,考えさせられました。

旅館で嬉しいのは,その後の車の運転がないこと。料理に合わせた,日本酒が楽しめます。
お酒は,京丹後市で造っている,「弥栄鶴」。
この土地の食べ物によく合う,この土地のお酒です。
地元に持って帰ったら,同じ様な印象は抱かないかも。
そして,杯ではなく酒盃で。これって,違った気分になれますね。
ひとつひとつの設定に,拘ってくれています。


このお椀,酒粕を使っています。そして,和からしがとてもよいアクセントになっています。
心から暖まります。酒粕のせいだけではありませんよ。
同じ摘み草料理を標榜する,翌日の「なかひがし」でも全く同じ物が出されました。
あれは,これとは似て非なるものでした。
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雪ウサギを思わせてくれる,塩釜。中には,筍が隠れていました。素敵な演出です。
一つひとつの料理が,お味だけでなく,意匠にも拘っています。感心してしまいます。
この時期,お付き合いのあった地元の旅館のご主人達にも体験してもらいたい,そう強く思っていました。

これこそ,摘草料理でしょうか。
けど,地元の山菜料理屋さんで出されるものとは,全く違います。

丹後の山の中で捕れた,猪。こげたねぎがよく合います。
京都市から,吉野杉の里を通り抜け,車で2時間近く掛かる山の中にある旅館であることを意識させてくれます。
これも,味わい深いものがある一品でした。

近くの川で取れたという,「あまご」と言うお魚の名前しか記憶に残っていません。


上手に炊いたぜんまい。そして,下には手毬鮨。


これまた,猪のお鍋。
意外に澄んだお出汁と,くさみを全く感じさせないお肉。
自然の中で走り回っている訳で,とても締まった味がします。
滋味に溢れている,食べていてそんな言葉が浮かんでいました。


これまた近くの川で取れた岩魚。
背中を開いた魚の捌き方が,印象に残りました。


これまた上手に炊いた筍。えぐみもなく,おいしい筍です。


最後のご飯も,そして水菓子も完璧です。
しつらえと雰囲気。もてなしと接客。そして料理。
どれをとっても,perfect です。
京都花脊の山の中。それを上手く生かした食材で料理を構成しています。
山の中で,海のものを出すなどという,愚かなことはまったしていません。
猪,岩魚,あまご,筍,そして摘草。それを,うまく織り込んだ構成。
とてもとても印象に残る料理と,時間でした。
10年くらい経って,自分のものの見方が変わった頃に,また訪れてみたいです。
住所:京都市左京区花背原地町375
電話:075-746-0231
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